Saturday, April 10, 2010

Definition Master

You-Miと言う男がいた。

面白い事を沢山知っている男だったが…同時に、驚くほど知らない事の多い男でもあった。
…その年のヒットチャートを独走している様な音楽を普通に「知らない」と言い
日本人なら誰もが観ていると言われるテレビ番組を「全く観ない」と言い
ベースボール・スターを「ゲームのキャラクター」程度にしか認識していなかった。
遊園地を嫌い、居酒屋を嫌い、外食を嫌う男。
しかし、欧米のコアな音楽シーンや音響機材のモードについては誰よりも熟知していた。
Industrial/Body/Digital Hardcore…果てはDrumNBassまで。
音楽が色々な国から上陸する度に、俺は彼のスタジオに招かれ、彼の作った「ソレ」を…
作品として発表する事の無い、自己啓発の為に作られたのであろう数々の音楽を聴かされた。
そしてその完成度と、音楽性の同期するスピードにいつも驚かされていた。
日本在住でありながら…彼の魂は、精神は、完全に日本人のソレでは無かった。
あきらかに…違っていた。

彼の作るトラックの硬質さと重さ。そして、音像の深淵。
…正直、今でも超えられる自信は…全くと言って無い。

…しかし。
彼の「才能」の所以は…分かる。今なら。

俺は…くだらない事を。意味の無い事を。価値のない事を…知り過ぎてしまった。
………豊富な知識?
………違う。
飽食の時代…それこそが「平凡の極み」なのだと言う事を、俺達は自覚しなくてはならない。



…彼に会いたいな。

彼なら…俺が取り憑かれている「呪い」の話を…聞いてくれるだろうか。

…笑われるだろうか。

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